2014年04月08日

排尿調節機構(ペットボトル1本分)

さて国家試験の問題はどうだったろうか。

知らない知識もあったと思うので、詳しく解説しよう。

排尿反射.jpg


排尿の表.jpg


問10 正しいのはどれか。(第41回)
1.排尿は内膀胱括約筋が収縮することで生じる.
2.膀胱内圧が50cmH20に達すると初発尿意が生じる.
3.膀胱の容量は800〜1,000m/である.
4.排尿に関する交感神経はTh8〜Th10にある.
5.排尿に関する副交感神経はS2〜S4にある.   


【解答・解説】 

排尿は、内膀胱括約筋が弛緩することで生じるので 1.はバツ1

2.3.はちょっと飛ばし。

排尿に関する交感神経は、Th111〜L2、副交感神経は、S2〜S4なので、 4.はバツ1で、 5.が正解

一応、知っている知識だけで正解は導ける。



それでは、飛ばした 2.3.について。

膀胱には、一体どれくらい尿を貯められるか?おしっこをどれくらい我慢できるか?ということじゃが、

膀胱には最大、約500〜600ml 蓄尿することが可能じゃ。

結構、貯められるもんじゃろ。

ペットボトルでお茶を飲むごとに“このくらい溜まるのか“とイメージすると良いぞ。
(あくまで心の中でだけでな)

そして、膀胱に 約200ml たまると尿意を感じる。

その時の膀胱内の圧力は 約15〜20cmH2O

なので、それぞれバツ1じゃ。  ちと、難しいか。



問11 外尿道括約筋を随意的に収縮させる神経はどれか。(第44回)
1. 腸骨下腹神経
2. 陰部大腿神経
3. 陰部神経
4. 下腹神経
5. 骨盤神経  


【解答・解説】 

これは簡単じゃろ。

外尿道括約筋を随意的に収縮させる神経は、 『陰部神経』 。

だから 正解は 3. 。



排尿についての国家試験をもう一つ、

これはどうじゃろうか???


問12 膀胱の神経支配について正しいのはどれか。(第38回)
1.下腹神経は副交感神経である.
2.骨盤神経は交感神経である.
3.陰部神経は体性神経である.
4.αアドレナリン受容体は膀肢体部に多い
5.βアドレナリン受容体は膀胱底部に多い    


【解答・解説】 

これも簡単じゃないかな。

下腹神経は交感神経、  骨盤内蔵神経は、副交感神経、  陰部神経は体性神経 

なので、 3.が正解 。

簡単じゃ。




「4.と5.はどうなの?」


そうそう、アドレナリン受容体についても少し説明しよう。

アドレナリン受容体についてはよくわからないと思うが、大まかに言うとこんな感じじゃ。


αアドレナリン受容体が、膀胱底部に多くあり、括約筋を収縮 させて、

βアドレナリン受容体は、膀胱体部に多くあり、排尿筋を弛緩 させる


存在位置とその作用を書き込むと、こんな感じじゃな。



     【アドレナリン受容体の位置と作用】
アドレナリン受容体.jpg


このくらいの知識でとりあえずは良いと思う。

もし、覚えられるなら、

おしっこの出にくい 前立腺肥大症の治療薬には、αアドレナリン受容体遮断薬 を使用する こと

を覚えておいたらどうだろうか。


おしっこがでにくい  →  括約筋を弛緩させたい  →  αアドレナリン受容体をブロック 

こんなストーリーをイメージしておけばアドレナリン受容体については完璧じゃ。


     【前立腺肥大の治療薬(αアドレナリン受容体遮断薬)】
アドレナリン受容体A.jpg




さて、実際に 尿が膀胱に溜まって、排尿するまでの過程 の話をしよう。


さっき話をした通り、尿が、膀胱に約200ml溜まり、内圧が15〜20cmH2Oになると尿意が生じる。

尿意とは、脳が排尿したいと思う意識だが、これは、

膀胱壁が拡張すると、その知覚が骨盤神経を通り排尿中枢(S2-4)に届く

その情報が大脳皮質に届いたものが、“尿意“じゃ。



     【尿意を感じた図】
排尿調整@.JPG



ちなみに、普段、膀胱は交感神経優位になっていて、蓄尿する方向にある。

また、尿意を感じても、排尿できない状況だと、 陰部神経活動を促して外尿道括約筋を収縮 させる。

さもないと、とんでもないことになるからな。


     【普段の図】
排尿調整A.JPG


尿意を感じ、いざ、おしっこをしようと思ったときは、

“尿を出すぞ〜”という命令が大脳から来て、

随意神経の陰部神経が、外尿道括約筋を弛緩させ、

また、

交感神経優位から副交感神経優位

にして排尿する。


     【排尿時の図】
排尿調整B.JPG

これが、排尿調節機構じゃ。



最後にもう1問、国家試験を1つやって、排尿は終了じゃ。


★国家試験をやってみよう
   

問13 誤っているのはどれか。(第40回)
1.随意的排尿には大脳皮質が関与する.
2.交感神経を刺激すると膀胱は収縮する.
3.膀胱体部からの求心性神経は骨盤神経である.
4.脊髄排尿中枢は第2〜4仙髄節にある.
5.外尿道括約筋は陰部神経の支配を受ける. 


ついでなので、排便も話もしよう。

排便についてはもっと単純じゃ。





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2014年04月07日

おしっこを我慢するときは陰部神経

排尿調節機構について話す前に、蓄尿、排尿に関わる筋肉について少し話をしよう。

復習じゃが、

蓄尿時には、交感神経が活躍し、膀胱排尿筋を弛緩させ、内膀胱括約筋(内尿道括約筋)を収縮させる。

そして、排尿時には、副交感神経が活躍し、膀胱排尿筋を収縮させ、内膀胱括約筋(内尿道括約筋)を弛緩させるのじゃ。


膀胱3.jpg


これを“筋肉”についてから考えてみよう。

排尿関係の筋肉には3つある。

膀胱排尿筋 と 内膀胱括約筋(内尿道括約筋) と 外尿道括約筋


膀胱排尿筋は、膀胱の壁にある平滑筋で、交感神経活動で弛緩し、副交感神経活動で収縮する。

内膀胱括約筋(内尿道括約筋)は、膀胱から尿道が始まるところ(内尿道口)周囲にある平滑筋で、交感神経活動で収縮し、副交感神経活動で、弛緩する。


この2つの筋肉の動きに関与している

交感神経の名前が 『下腹神経』  、

副交感神経の名前が 『骨盤内蔵神経』   じゃ。


『下腹神経』は、下部胸髄〜腰髄(Th11-L2)から出ていて、『骨盤内蔵神経』は、もっと尾側の仙髄からでている(S2-4)。

この仙髄部分は、排尿の反射中枢でもあるんじゃ。

以前、交感神経は、真ん中で、副交感神経は頭と尾側から出ると言ってたな。

そうそう、この図。

神経G.jpg


この図の尾側のところが、膀胱のことを表しているんじゃな。



3つめの筋肉は外尿道括約筋だ。

外尿道括約筋は、内尿道括約筋より、より外側にあり、体性神経の 『陰部神経』 で調節されている。

この筋肉は、『陰部神経』の活動によって収縮し、活動が低下すると弛緩するんじゃ。


膀胱排尿筋と内尿道括約筋は、自律神経支配なので、自分の意思ではコントロールできない が、外尿道括約筋は、体性神経。

体性神経は、そう。

自分の意志でコントロールできるもの じゃな。


おしっこに行きたくなっても、我慢出来ると思うけれども、そのときに働いているのが、外尿道括約筋じゃ。

陰部神経の活動を高めて収縮させておしっこが漏れないようにしているんじゃな。

もし、陰部神経が調子悪いと大変なことになりそうじゃな。


まとめるとこんな感じじゃ。


排尿の表.jpg



この表は重要な情報で、これだけでも十分に、国家試験を解くことができる。

例えば、


問9  排尿で正しいのはどれか。(第46回)
1.膀胱は交感神経活動で収縮する.
2.排尿の反射中枢は腰髄にある.
3.内尿道括約筋は副交感神経活動で収縮する.
4.外尿道括約筋は随意制御できる.
5.外尿道括約筋は陰部神経活動によって弛緩する.    


膀胱が収縮するのは、副交感神経活動なので1.はバツ1

排尿の反射中枢は仙髄(S2-4)じゃ。なので、2.もバツ1

内尿道括約筋が収縮するのは、交感神経活動なので、3.もバツ1

外尿道括約筋の支配は、陰部神経(体性神経)なので、随意制御可能じゃ。なのでこれが正解。

外尿道括約筋を支配する陰部神経の活動が高まっているときは、おしっこを我慢している時なので、収縮している、活動が低下すると弛緩して排尿することになるんじゃ。

我慢している時が、陰部神経の神経活動が高まっている時 と覚えておくことじゃな。



そのほか、こんな問題が出ているが、どうかな。



★国家試験をやってみよう

問10 正しいのはどれか。(第41回)
1.排尿は内膀胱括約筋が収縮することで生じる.
2.膀胱内圧が50cmH20に達すると初発尿意が生じる.
3.膀胱の容量は800〜1,000m/である.
4.排尿に関する交感神経はTh8〜Th10にある.
5.排尿に関する副交感神経はS2〜S4にある.   

問11 外尿道括約筋を随意的に収縮させる神経はどれか。(第44回)
1. 腸骨下腹神経
2. 陰部大腿神経
3. 陰部神経
4. 下腹神経
5. 骨盤神経  



つぎは、実際に尿が膀胱に溜まって、排尿するまでのメカニズムについて考えてみるとするか…………………….





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posted by わらじい at 13:52| Comment(2) | 末梢神経 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月06日

おしっこの筋肉

さて、問題は簡単だったかな。

国家試験の問題だからこれが解ければ、晴れて合格じゃ。

もう一度、交感神経と副交感神経の機能の表を見ながら一つ一つ見ていってみるとしよう。



交感神経と副交感神経.jpg


まず、


問5 交感神経が優位に働いたときの反応で誤っているはどれか。(第41回)
1.瞳孔の散大
2.心拍数の増加
3.収縮期血圧の上昇
4.皮膚動脈の収縮
5.排尿筋の収縮      


【解答・解説】 
「交感神経が優位に働いた時」なので、「クマにあった時」を思い浮かべれば良い。

逃げるために、情報を集めるので、瞳孔は散大

ドキドキするから 心拍数も増加、 収縮期血圧も上昇、 皮膚動脈の収縮もする。

そんなこんなで、おしっこしている場合ではないので  排尿筋は弛緩する

すなわち、誤っているのは  選択肢5.



問6 副交感神経の興奮によるものはどれか。(第46回)
1.瞳孔散大
2.胆嚢弛緩
3.消化管蠕動抑制
4.気管支平滑筋収縮
5.外生殖器血管収縮     


副交感神経の興奮は、「午後の昼寝」を思い浮かべる

選択肢にわからないものが出てくると思うが、とりあえず知っている知識だけで解いてみよう。

まず、瞳孔は光を入れる必要がないので 縮瞳

なので、選択肢1.は間違い。

選択肢2.はよくわからないので飛ばし。

選択肢3.はどうだろうか?消化管の運動は、まったりしているときは、亢進するはずなので、これも間違い。

選択肢4.はどうか?気管については、クマに会って逃げるわけではないので空気を入れる必要もないので気管は収縮。よってこれが正解じゃ。

選択肢5.もよく分からないと思うが、知っている知識だけで、正解は導ける。

副交感神経の興奮で、胆嚢は収縮するし、外生殖器血管は弛緩する。

これは覚えても良いが覚えなくてもとりあえずは解答は導けるな。余裕があれば覚えて欲しい。

正解は 選択肢4.



問7 副交感神経の作用で正しいのはどれか。2つ選べ(第44回)
1. 発 汗
2. 涙液分泌
3. 立毛筋収縮
4. 気管支収縮
5. 筋血管拡張    


副交感神経の作用を問われているので、これも「午後の昼寝」を考える。

汗は出ないね。

涙液の分泌は、唾液腺の分泌と同じ考え、分泌。よって〇。

立毛筋は鳥肌立たないので収縮はしないのでバツ1

気管支は?空気を入れる必要がないので、収縮。だからこれが〇だ。

骨格筋内の血管は副交感神経の作用で収縮する。

でも、筋血管について知らなくても正解できるじゃろ。

正解は 選択肢2.と4.



問8 副交感神経が優位に働いたときの反応はどれか。(第45回)
1. 散 瞳
2. 心拍数増加
3. 気管支収縮
4. 皮膚血管収縮
5. 膀胱括約筋収縮


これも、「午後の昼寝」。

縮瞳するし、心拍は低下、気管支は???

そう、収縮だ。だからこれが正解。

皮膚血管は弛緩するし。膀胱括約筋は弛緩するのでバツ1だ。

正解は 選択肢3.




ここで、

「あれ?膀胱に関しては、副交感神経では収縮じゃなかったの?」

と思ったんじゃないかな。


そう、副交感神経の興奮で、膀胱排尿筋は収縮する。


ただし、排尿筋はな。  

括約筋は弛緩だ。



排尿筋と括約筋??????


待ってました!!!  まあ、この図を見てくれ。


膀胱3.jpg


排尿関係の筋肉には3つある。

図に書いてある膀胱排尿筋、内膀胱括約筋(内尿道括約筋)

それと、外尿道括約筋



蓄尿時には、交感神経が活躍し、

膀胱排尿筋を弛緩、 内膀胱括約筋を収縮   させる。



そして、排尿時には、副交感神経が活躍し、

膀胱排尿筋を収縮、  内膀胱括約筋を弛緩  させるのじゃ。


蓄尿と排尿で、膀胱排尿筋と内膀胱括約筋が、逆の作用をしているのがわかってもらえるだろうか。


問8では、副交感神経が優位に働いたときの反応を問われているので、膀胱排尿筋は収縮し、膀胱括約筋は、弛緩するので 、選択肢5.の“膀胱括約筋収縮”は、バツ1



蓄尿時に活躍する交感神経には『下腹神経』

排尿時に活躍する副交感神経には『骨盤内蔵神経』という名前がついている。



理学・作業療法の国家試験は、なぜか排尿調節機構がけっこう出題されるので、ここで少し説明してみよう。






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posted by わらじい at 11:43| Comment(0) | 末梢神経 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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