うららかな春の一日じゃ。
わらわらわら。
今日は、
ボツリヌス菌 の話をしよう。
ボツリヌス菌は、通常は土や泥のなかにいて、酸素がなくても生きることができる
嫌気性菌 じゃ。
【ボツリヌス菌】
農林水産省HPより
ボツリヌス
毒素が、ハム、キャビヤ、辛子蓮根などに混在し、それを接種してしまうと、中毒症状を引き起こす。
特に、はちみつにはボツリヌス菌の
芽胞が入っていることがあり、1歳未満の幼児で感染すると、菌の芽胞が腸管内で増殖し小児ボツリヌス症を発症するので、幼児には、はちみつをすすめない。

なんと、日本で生産される5〜10%に含まれているとの報告もあるのじゃ。
どうしてもという時は、加熱またはアルカリで処理すると失活して毒性がなくなるため、十分加熱すれば安全じゃがな。
(大人は、腸内細菌叢が発達しているので、芽胞が入ってきても大丈夫じゃ。毒素はだめじゃがな。)
「神経学の時になぜ、関係のない、ボツリヌス菌の話なんかするの??」
まあまあ。あわてるな。
ボツリヌス中毒になると、身体に様々な症状を引き起こす。
悪心・嘔吐などに続き、
眼瞼下垂、視力低下、複視、散瞳などを起こし、その後
四肢麻痺、呼吸困難、便秘、排尿障害が出現するのじゃ。
結構、たいへんなことがおこるじゃろ。
さて、なぜ、そのような症状が出るかということを考えてみよう。
実は、菌が産生するボツリヌス毒素は
神経筋接合部でアセチルコリンの放出を妨げる作用があるのじゃ

細かく説明すると、
活動電位が軸索終末にきてアセチルコリンを放出するときに、ボツリヌス毒素があると


アセチルコリンの放出を阻害 する。

それにより、神経筋接合部では、筋肉に情報がいかないので、
弛緩性麻痺 が引き起こされる。

症状で、
眼瞼下垂、四肢麻痺、呼吸困難 などがあるのは、この弛緩性麻痺のためじゃ。
そのほか、症状に
散瞳、便秘、排尿障害があるが、なにか気がつくことはないか?
この症状、 すべて、クマにあったときのような……..(昼寝と正反対)
実は、ボツリヌス毒素は、
副交感神経での
節後線維―器官間のアセチルコリンの放出も阻害 するのじゃ。

そのため、副交感神経の作用を打ち消したこと
(副交感神経麻痺)が起こるのじゃ。
散瞳、排尿障害、便秘ボツリヌス中毒は、このように恐ろしいものだが、この作用を逆に有効に利用する、
ボツリヌス療法 というものがある。。
ボツリヌス菌がつくる
ボツリヌス毒素を注射する処置じゃ。
ボツリヌス毒素が、
運動神経終末に作用し、アセチルコリンの放出を阻害することにより過剰な筋緊張が緩和されることを狙った処置じゃ。
保険適応には 眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、および重度の原発性腋窩多汗症などがある。
ボツリヌスによって、これらの疾患で緊張した筋肉を緩和するできるのじゃ。
ボツリヌス毒素を注射で投与すると直ちに神経終末への取り込みが始まる。
効果は2〜3日後に出始め、1〜2週間以内に安定し、効果は、
3〜4ヶ月持続する。
保険診療で行っても注射自体が高価なのでなかなか問題もあるのじゃがな.................
国家試験でも、ボツリヌスは結構、出題されているのじゃ。
問37 神経筋接合部の障害が病態の中心である疾患はどれか。(第45回)1.ボツリヌス中毒症
2.筋萎縮性側索硬化症
3.急性散在性脳脊髄炎
4.Guillain-Barre症候群
5.Charcot-Marie-Tooth病
問38 痙縮の治療においてボツリヌス毒素の作用部位はどれか。(第46回)1.脊髄後根神経節
2.脊髄前角
3.脊髄前根
4.運動神経終末
5.筋小胞体
問39 ボツリヌス毒素を用いた治療で、効果の一般的な持続時間はどれか。(第47回)1.1〜3日
2.1〜3週間
3.3〜6ヶ月
4.1〜3年
5.10年以上
簡単に答えられたか?
では、
神経伝達物質の異常でおこる病気をもう一つ紹介しよう。
この講義が、多くの人に伝わりますように........
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