2014年04月19日

多発性硬化症は「多発性」じゃ。

まずは、前回の解答解説からじゃ。


問24 女性に多いのはどれか。(第43回)
1.筋萎縮性側索硬化症
2.晩発性小脳皮質萎縮症
3.Alzheimer病
4.進行性角上性麻痺
5.Parkinson病   



女性に発生の多い疾患で覚えるべきものは、

アルツハイマー病 、 多発性硬化症 、 重症筋無力症 

女性に多い疾患.jpg

正解は3.アルツハイマー病  。






では多発性硬化症の話に戻そう。

中枢神経の髄鞘(神経膠細胞)がわるくなってしまう(脱髄)のが、多発性硬化症

脱髄性疾患のコピー.png



多発性というからには、 多発 するのじゃ。


この 多発 には2つの意味があって、



1つは、時間的に多発する(時間的多発)ということ。

簡単に言うと、 良くなったり悪くなったり症状を繰り返す ということじゃ。



もう1つは、いろんな部分にできる (空間的多発) こと。

髄鞘が悪くなる(脱髄)が、中枢神経(脳脊髄)に多発に起こる

スライド1.png



そのため、いろいろな症状が起こってくる。

症状で重要なのは、

視力低下や かすみ目、複視眼球運動障害 などの目の症状


そのほか、錐体路障害、しびれ、排尿障害、うつ など。
(錐体路障害についてはまたあとで話す)




身体に痛みを
出すこともあって、首を前に倒すと背中が痛む (レルミット徴候) 

【レルミット徴候のイメージ】
スライド2.png





痛みをともなうけいれん (有痛性強直性けいれん) も起こす。

【有痛性強直性けいれんのイメージ】
スライド3.png




これらの症状は、入浴や運動などによって体温が上昇すると、増悪する。

熱のストレスで、脱髄をより進めてしまうからじゃ。



それくらい知っていいれば十分じゃ。

まとめると

多発硬化症まとめ.jpg




国家試験を解いてみよう。



問25 多発性硬化症について正しいのはどれか。2つ選べ(第47回)
1. 男性に多い
2. 発症は50歳代に多い
3. 脱髄病変がみられる
4. 視力低下が出現する頻度が高い
5. 運動負荷に制限を設ける必要はない  


問26 多発性硬化症について正しいのはどれか。(第44回)
1. 高齢者に多い
2. 脱髄が主病変である
3. 症状に日内変動がみられる
4. 初発症状として眼瞼下垂が多い
5. 脳神経では聴覚が傷害されやすい  


問27 多発性硬化症について正しいのはどれか。(第42回)
1. 階段状に増悪する
2. 温熱によって症状が悪化する
3. 深部腱反射が消失する
4. 50,60歳代で好発する
5. 女性より男性に多く発症する    
  


問28 多発性硬化症に特徴的な痛みはどれか。2つ選べ(第43回)
1. テタニー様痙攣に伴って生じる四肢の放散痛
2. 頭部前屈に伴って生じる背部下方への電撃痛
3. 食後に生じる胸背部鈍痛
4. 上肢と手指の発赤を伴った疼痛
歩行を困難にするしびれを伴う下肢の疼痛





多発性硬化症では、こんな感じで出題されるんじゃ。










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posted by わらじい at 22:12| Comment(0) | 疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

国家試験で、覚えるべき疾患は5つだけ。

春なのに肌寒い今日は、藁には辛い日じゃ。


それでは、  髄鞘がおかしくなってしまう病気 の話をしよう。

まず、髄鞘についての復習じゃ。



髄鞘とは、

末梢神経では、シュワン細胞が、

中枢神経では、神経膠細胞(希突起細胞(オリゴデンドログリア))が、

軸索に何重にも巻き付いたものじゃ。



髄鞘は、絶縁体なので、髄鞘があることによって、跳躍伝導を起こし、伝導速度を早くすることができる。


髄鞘をもつ神経を、有髄神経という。


ブログのイラスト.jpg

スライド7.JPG



髄鞘が損傷される疾患(脱髄性疾患)は、髄鞘がやられてしまうことによって、神経興奮の伝導ができなくなってしまう のだ。


覚えるべき 髄鞘が損傷される疾患(脱髄性疾患)は2つ。



多発性硬化症 と ギランバレー症候群 



この2つの違いは何か?


中枢神経の髄鞘がわるくなってしまう、すなわち、

神経膠細胞(希突起細胞(オリゴデンドログリア))が障害される のが、多発性硬化症 



末梢神経の髄鞘がわるくなってしまう、すなわち、

シュワン細胞が障害される のが、ギランバレー症候群 だ。



脱髄性疾患.jpg



具体的な、疾患名が出てきたので、脳神経学へのアレルギーが出てきているものもいると思う。

嫌な気持ちになるのも、仕方がない。

疾患の勉強は、覚えることも多くて辟易するからじゃ。


嫌になってしまう原因に、膨大な量の疾患を覚えなくてはならないと感じることがあげられる。

しかし、冷静になって、国家試験を検討すると、それほど多くの疾患は出題されていない。 



脳血管障害、脳腫瘍、認知症(アルツハイマー病、ピック病など)を除いて検討すると、とりあえず 5つの疾患 だ。



その5つとは、


多発性硬化症

ギランバレー症候群

パーキンソン病

筋萎縮性側索硬化症

重症筋無力症





コマッターの人たちは、とりあえず、この5つだけ、完璧にしてみることを目標にしてみたらどうじゃろうか。

もっと勉強した方がいいいのじゃないかと思われる人もいるじゃろう。

そりゃあ、細かいところまで勉強した方が良いに決まっているが、

この5つだけでも、かなりの点数が取れる。

5つくらいならできそうじゃないか。

できるようになったら、もっと手を広げよう。



この5つのなかで、これから話をする脱髄性疾患には2つあるので、頑張って欲しい。

まず、多発性硬化症


この病気は、若い女性に多い




ちなみに、代表的な、女性に発生頻度が高い疾患 は、6個ある。


女性に多い疾患.jpg



その中で覚えるべき疾患は、

アルツハイマー病 、 多発性硬化症 、 重症筋無力症 

この3つは、ぜひとも覚えておきたい。



アルツハイマー病は おばあちゃん に多い気がせんか?

そのほか、 片頭痛なんとなく 女性 に多い気もするし




国家試験には、こんな問題もでることがある。


問24 女性に多いのはどれか。(第43回)

1.筋萎縮性側索硬化症
2.晩発性小脳皮質萎縮症
3.Alzheimer病
4.進行性角上性麻痺
5.Parkinson病    


覚えていれば簡単だし、覚えていなければ全くわからない問題の典型例じゃ。







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posted by わらじい at 10:47| Comment(0) | 疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月17日

授業中のおしゃべりは「全か無かの法則」


もう一度、神経興奮の伝達の特徴をおさらいしよう。


【神経興奮の伝達の特徴】
@ 神経の直径が太いと早く伝わる
A 温度が高いと早く伝わる
B 有髄線維は、跳躍伝導で無髄線維より早く伝わる
C 決して伝導中に減衰しない (不減衰伝導)
D 途中で活動電位が発生すると、両方向へ伝えられる  (両方向伝導)
E 別の神経線維に伝わることはない  (絶縁性伝導)




それでは、いつもの通り、昨日の問題の解答解説からじゃ。


問20 神経線維の興奮伝導について誤っているのはどれか。(第39回)
1.髄鞘の電気抵抗は大きい.
2.伝導インパルスの大きさは刺激の大きさに比例する.
3.伝達速度は温度の影響を受ける.
4.活動電位の大きさは伝導中一定である.
5.有髄神経では跳躍伝導がみられる.  


【解答・解説】 
有髄神経で認められる髄鞘は電気抵抗が大きいので、そこには電気が流れず跳躍伝導をするので、1.と 5.は〇

刺激の強さと、伝導速度は関係がないので、 2.はバツ1

温度が高いと早く伝わる。そしてその活動電位は減衰しない(不減衰伝導)。

よって、 3.4.は〇


正解は 2.




問21 神経伝導で正しいはどれか。(第44回)
1.体温の低い方が速い.
2.髄鞘のない方が速い.
3.線維直径の太い方が速い.
4.線維が長いと活動電位は減衰する.
5.線維の途中を刺激すると刺激部位から片側性に伝導する.   


【解答・解説】 
伝導速度は、温度の高いとき、髄鞘があるとき、神経直径が太い時に早くなるので、 1.2.はバツ1で、 3.が〇

活動電位は減衰しない(不減衰伝導)ので、 4.はバツ1

途中で活動電位が発生すると、両方向へ伝えられる(両方向伝導)ので、 5.もバツ1


正解は 3.




問22 1本の神経線維を電気刺激した場合の興奮電動の説明で誤っているのはどれか。(第47回)
1.興奮は両方向に伝わる.
2.興奮は太い神経ほど早く伝わる.
3.有髄神経では跳躍伝導が起こる.
4.興奮は隣接する別の線維に伝わる.
5.興奮の大きさは変わらずに伝わる.   


【解答・解説】 
途中で活動電位が発生すると、両方向へ伝えられる(両方向伝導)ので、 1.は〇

2.3.は〇

5.も不減衰伝導だから〇。

興奮は、別の神経線維に伝わることはない(絶縁性伝導)ので、 4.がバツ1


正解は 4.




問23 正しいのはどれか.2つ選べ.(第43回)
1.末梢神経では中枢神経に比べ両側伝導が生じにくい.
2.末梢神経は伝導速度からA,B,C線維に分類される.
3.ランヴィエ絞輪部には絶縁作用がある.
4.神経伝導速度は神経線維外径が大きいほど速い.
5.神経伝導速度は温度が上昇すると遅くなる.


【解答・解説】 
末梢神経では、中枢神経に比べ両側伝導が起こりやすい特徴がある。 よって 1.はバツ1

伝導速度からA,B,C線維に分類されるので、 2.は〇

ランヴィエ絞輪とは、絶縁体の髄鞘に囲まれた区域で、ここに跳躍伝導していく。

ランヴィエ絞輪は絶縁体ではないので、 3.はバツ1

ブログのイラスト.jpg


伝導速度は、、神経直径が太いとき、温度の高いときに早くなるので、 4.は〇で、 5.はバツ1



正解は 2. と 4.






活動電位の発生 については、ひとつだけ教えよう。

それは、


『全か無かの法則』




これは、どういう法則かというと、

「神経線維は、電気刺激が閾値未満では、全く反応しないが、閾値以上の刺激がくると最大で、同じ大きさの反応を示すということ」  じゃ。





電気刺激の大きさが、”ある大きさ”以上でなければ、神経は全く反応しない。

その代わりに、”ある大きさ”を一度、越えたら、かならず MAXの反応がおこる。

反応がおきるときは、いつでもMAXでおこる。

つまり、

”ある大きさ”以上を超えれば、その強さが強かろうが、弱かろうが、いつでも関係なくMAXで起こる

ということじゃ。


また、この”ある大きさ”のことを「閾値」という。





たとえば、授業中に2人、こそこそ、おしゃべりをする。 (小さな電気刺激)  
illust3684thumb.gif

先生は怒らない。 (全く反応しない)
job_senesi.png






次に、3人で、こそこそ、おしゃべりをする。 (すこし大きな電気刺激)illust3686thumb.gif

まだ先生は怒らない。 (全く反応しない)job_senesi.png






最後に、3人で大声で話す。 (大きな電気刺激)
illust3692thumb.gif

ついに、先生の閾値を超え、MAXで激怒する。 
(電気刺激が閾値を超えたので、反応する。 その反応は最大。)
kenka_fuufu.png








次の日。

こんどは、クラス全員がおしゃべりする。 (とても大きな電気刺激)
おしゃべり.jpg


先生は閾値を超えて、MAXで激怒する。

しかし、その怒りの大きさは、3人で話していた時と変わりない。

電気刺激が閾値を超えたので、反応する。

しかし、刺激がより大きくなったからといってその反応の大きさは変わらない。

いつでも最大で同じ大きさなのだ。

kenka_fuufu.png



これが、



『全か無かの法則』 じゃ。



問20 細胞膜の電位についての記載。〇×で答えよ。(第38回改)
1.活動電位の発生は全か無の法則(All or None Law)に従う.
2.活動電位を発生させる臨界の刺激強度を閾値という.


【解答】
ともに〇 






つぎは、「髄鞘」がおかしくなってしまう病気の話じゃ。








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posted by わらじい at 21:01| Comment(0) | 解剖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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